特集コラム

Column Vol.3

絶対の基本 「安全操業」に向けた意識統一

   

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東洋合成工業の現場では、会社で働く人々や地域にお住いの方にとって安心できる操業環境を確保するべく、全社で危険源(=トラブルの原因)を撲滅する活動を展開しています。

全社危険源撲滅活動の概要

「トラブルゼロ」を実現するために「意識乖離ゼロ」を目指す

堤 清彦本社 環境安全部 担当課長
堤 清彦
全社危険源撲滅活動を始めた背景として、近年高まっているお客様からの「多品種少量生産」「短納期」のニーズがあります。このニーズに応えていくなかで、生産現場では設備の複雑化が進み、高所や狭い所などの作業も増加している傾向にありました。

そこで当部署では、全社に対して危険源についてのアンケートを実施。すると、「バルブ」に関する回答が多く集まりました。当社の生産現場では、配管に化学液体が張り巡らされており、それらを流す・止めるバルブが数多く存在します。トラブルが起きた場合、作業者や近隣住民にも甚大な影響を与えてしまうバルブも多いことから、特に被害・影響の大きいバルブを「危険バルブ」と名付け、調査、記録、アセスメント(=評価・査定)する活動を2019 年9月にスタートしました。

この活動の目的は、管理職、課員、そして協力会社の全員で、危険バルブがどこにあるのかを探し、把握して分析することで、「全員が危険源に対する同じ意識を持てるようにすること」です。各事業所にこの目的を理解していただき、一丸となって取り組んだ結果、2018 年度は18件あったトラブル件数が2019 年度は14件に、今年度に入ってさらに減少傾向にあります。

今後さらに事業所間の情報共有を活発化させ、「トラブルゼロ」実現に向けて活動を推進していきたいと考えています。

CASE1. 千葉工場

危険源撲滅を自分の問題と捉えてもらうべく現場を主役にした活動を展開

  • 林 孝雄執行役員 千葉工場 工場長
    林 孝雄
  • 白鳥 圭一千葉工場 千葉環境安全課 課長
    白鳥 圭一

感光性材料の主力工場である千葉工場では、大規模な生産設備を擁し、300名を超える社員が生産に従事しています。どの現場でも多品種・短納期のお客様ニーズに応えるために日々努力し、作業の効率化に注力している一方、バルブの開け忘れや閉め忘れは注意喚起していてもなかなか減らない状況が続いていました。それは、「危険源の撲滅」が管理者側からの情報発信に留まっており、社員たちが自分の問題として「仕事の一部」にするまでの落とし込みができていなかったからだと感じています。

そこで今回の活動では、自主保全部会のメンバーを中心として現場の社員に主体となってもらい、大規模な危険バルブ抽出活動を実施。結果、2200を超える危険バルブを抽出することができましたが、一番の成果は一人ひとりに「何が危険源なのか」「危険源をなくすためにどうすればいいのか」という"危険を見る目"が養われたことだと感じています。

今後はさらにこの流れを加速し、現場社員が自発的に危険源を察知して改善案を提案してもらう、そして私たちが内容を精査し投資計画を検討するという循環をつくっていきたいと考えています。そのために必要なことは、活動を社内にアピールし、評価を得ることだと思っています。

先日、社長や事業部長に対して活動内容や成果を発表する機会があり、社員にとっても大きな刺激となりました。引き続きこうした場を増やしていき、社員の改善へのモチベーションにつなげていきたいと思っています。

安全のキーパーソン

危険を危険とわかってもらう価値観の擦り合わせが必要だった

増野 翔太千葉工場 千葉環境安全課
増野 翔太
今回の活動の推進役を担いましたが、最も壁となったのは現場との意識の乖離でした。たとえば、高所での作業は私たちから見るとかなり危険な作業に感じられるのですが、現場の方にとっては「お客様のニーズに応えるための最善策」であり、またそれが当たり前になって特に疑問を抱かなくなっているというケースもありました。

今回の活動を通じて、互いの意見をぶつけ合い、「そもそも危険源とは何なのか」という共通認識を持てたのは大きな成果だったと感じています。現在、トラブルのパターンがある程度絞られてきているので、各現場への水平展開を図り、トラブルゼロへの意識を統一化していければと思っています。

タテ・ヨコのコミュニケーションで新たな発見が得られた

加久田 祐樹千葉工場 千葉製造部 千葉生産5課
加久田 祐樹
危険バルブを抽出するなかで、改めて見てみると何に使っているのかがわからない、もしくは今はもう使っていないバルブが相当数発見され、その一つ一つの背景を探っていくのに苦労しました。ただそのなかで、経験のある先輩から過去の話を聞いたり、また他部署の方から客観的な意見をいただいたりする機会が得られ、知らなかった知識を理解できたり、また業務を違う角度から見ることができるようになったのは進歩だったと感じています。

現在、自主保全部会が中心となって活動を進めていますが、今後は各現場の日々の業務のなかで自然に改善のアイデアが浮かぶような環境づくりができればと思っています。

CASE2. 香料工場

工場内のバルブを一元管理し創意工夫を凝らした改善活動を実施

  • 鈴木 歩化成品事業部 化成品生産統括部 香料工場 工場長
    鈴木 歩
  • 小林 裕之化成品事業部 化成品生産統括部 香料工場 香料生産課 課長
    小林 裕之

香料工場として注意する点が三つあります。まず一つ目が、製造しているのが香料材料であること。仮にトラブルが起きると、臭いが周辺環境に拡散してしまうリスクを抱えています。二つ目が、生産設備が屋外にも設置されていること。設備は防油堤の内部にあるものの、そこへつなぐ箇所でトラブルが起きた場合、被害が広範囲に及んでしまいます。三つ目が、タンクヤードであること。設備ごとに担当部署が分かれているのではなく、全設備にあらゆる部署や協力会社が関わっているため、情報共有の工夫が求められます。

このような特徴から、今回の危険源撲滅活動ではすべてのバルブをナンバリングしたチェック表を作成、その一つ一つに改善情報を記録し、全員への周知徹底を図りました。活動のなかで発見だったのは、番号がふられていない、つまり現場に認知されていないバルブが相当数あったことです。また、しゃがまないと届かない場所や脚立に乗らないと届かない高所にも多くのバルブが設置されていることもわかりました。使われていないバルブは配管の設置を変え撤去し、狭い所や高所は遠隔操作でバルブの開閉ができる仕組みを考案して危険バルブを排除していきました。

工場では、人員は少数ではありますが、その分意思決定が早く、すぐに改善に着手して形にできる強みがあります。今後もこの強みを活かして、他工場のモデルケースとなるような改善へつなげていきたいと思います。

安全のキーパーソン

チェック表を配布し協力会社への周知を徹底

column1_2020_8.jpg化成品事業部 化成品生産統括部
香料工場 香料生産課
川上 拓
今回の改善で最も工夫したのが、協力会社の皆さんへの周知徹底です。口頭で説明していても、作業するなかで抜け落ちてしまうことはどうしてもあるので、危険バルブはどこにあるのかが一目でわかるチェック表を作成し、落とし込みをしていきました。

その結果、危険バルブを生産現場全体で抽出する、協力会社の方に作業しづらい箇所や困っている箇所を挙げていただく、挙がってきた課題を改善するという理想的なPDCAサイクルを回せたと感じています。

今後も班ごとに月に1回実施する職場安全衛生会議などの場を活用して、工場全体で危険バルブを見つける目を育んでいきたいと思っています。

「人に優しい」に加えて「設備に優しい」対策を

網代 貴行化成品事業部 化成品生産統括部
香料工場 香料設備課
網代 貴行
今回の活動のなかでいくつかのバルブを撤去するという判断になりましたが、設備担当として、現場の皆さんと「本当に撤去して良いのか」「ここは必要ではないのか」などと意見交換しながら作業を進めていきました。

改善活動は、生産活動を実施している間は実施できないため、段取りを決めるのには苦労しましたが、上司や現場の皆さんと密にコミュニケーションを取りながら進めることができました。

今後も設備担当として、工場全体のスローガンである「人に優しく」はもちろん、「装置にも優しく」を心がけ、設備マニュアルの改善などに取り組んでいきたいと思っています。

  • 危険バルブを特定後自主保全を実施危険バルブを特定後自主保全を実施
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