特別対談

顕在化する社会課題の解決に素材イノベーションを通じて貢献し、未来を創造していく企業を目指します。

「お客様の要求に応えるモノづくり」"研究開発が生命線"という創業者の精神が当社の文化に

鳥井:
早いもので、私も社外取締役を務めさせていただき6年が経ちました。社外取締役といえば、月に2、3度出社し、取締役会などで意見を言うという役割を期待されることが多いのですが、当時会長の要望は、「そのような取締役では困る、取締役会と経営会議だけでなく各事業部の会議に出て、工場もすべてよく見て、その上で適切な助言をいただきたい」というものでした。実際に、いきなり導入教育で2、3週間の合宿があり、各工場を回って集中的に教育を受けることになり、私は驚きとともに任務をスタートしました。さらに驚いたのが、大手化学メーカーでも普通は研究所にしかないような高額な分析装置が工場のあちこちに何台もあったことでした。現場に惜しみなく設備を導入し、ここまで品質を追求するのかとカルチャーショックを受けました。「どこまでも高品質を追求する」という木村会長のものづくりに対する考え方が、工場の隅々まで行き渡っていました。また、お客様と一体となって現場で品質をつくり込む競争では、絶対負けないと多くの社員は自負していました。今日の東洋合成を支える最先端のEUV 用感光材や、金属イオンの不純物をppt オーダーまで下げた超高純度溶剤などの商品、高浜油槽所のお客様志向の業務運営を見ると、それが木村会長の創業以来追求してきたものづくりの姿勢であり、その考え方が組織カルチャーにしみ込んでいることが、当社の飛躍的な成長を支えているように思います。

木村:
たしかに当社は品質に強いこだわりを持つ会社なのかもしれませんが、鳥井取締役が言われるように、自分たちがユニークだということを我々自身は認識していませんでした。お客様にどうやって応えていくのかを考え、長期的なリレーションシップを維持していくには、常に長い目で技術の先を見つめながら品質で応えていかなければと、全力で仕事に取り組んできた結果です。その過程にあったのはスマートさというよりも、むしろ泥臭さと品質に対する強い執着心です。"研究開発が生命線"という意識は、部門を越えてあり、生産現場だけではなく、研究開発の人材、製造技術の人材、品質保証・管理、業務、営業、スタッフ部門も皆で品質をつくると思っています。半導体の進化は、自分たちが支える、お客様を支えるのだという社員のスピリットはものすごく強いものがあります。そして、課題解決に向けては、考えられる打ち手は理論的に証明できていなくても、とりあえず試すし、やってみるし、組み合わせます。その結果として、必ずお客様の要求をクリアする、その積み重ねです。そうしたことが、当社が独創的になってきた所以だと思います。

鳥井:
コロナ禍で外食産業や輸送業など多くの業界で大変な苦労をされているなか、DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速によって半導体デバイスの需要は大きく伸び、その川上にいる当社は逆に追い風を受けました。また、半導体関連材料ばかりでなく香料材料も好調に推移しており、事業環境としては恵まれました。しかし、ここにきてコロナ感染拡大がさらに厳しい状況となっておりますので、お客様の旺盛な需要に応える現場の方々、それを支えるスタッフの方々はさぞかし苦労されていることと思います。当社は社長が本部長を務める新型コロナウイルス感染症対策本部を素早く立ち上げ、職場感染予防の徹底、テレワークなどを推進されてきました。こうした皆様の努力の結果、新型コロナウイルス感染による操業への影響は軽微であり、これまでのところ、迅速な危機対応がうまく機能していると感じております。

木村:
私自身、世界全体がこのような大きなパンデミックに見舞われたことに非常に驚きましたし、さらに、DX(デジタルトランスフォーメーション)などの社会的変化がここまで加速されたことに一番の驚きを感じました。この一年は、コロナ禍での社会課題解決に向けて、最重要ともいえるDXを進めるために、お客様のサプライチェーンを途切れさせないという、一心で皆とやってきました。今まで誰も経験したことのない状況下で、テレワークやオンラインへの急速な切り替えを行い、大幅な増産を実現するわけですから、社員の安全をしっかりと守り、社員の家族にも不安を解消してもらえるよう感染対策等の説明をし、理解を仰ぎながら、供給体制を整え続けた1年でした。このような想定外の状況のなかで、これだけの大増産を事故もなく、安全にできたこと自体が本当にありがたいことですし、社員の皆さんには頭が下がる思いで、本当に感謝しかありません。

情報化社会の進展と環境調和型の社会を道しるべに、素材の力で未来を描く

鳥井:
社会のメガトレンドは、大きく二つありますが、一つは情報化社会がますます進み、IoTによっていろいろなデータが集まり、統合されて、それらの情報を5Gの高速であらゆる空間につなぐことができるようになるデジタル化社会への移行です。それが結局は、さまざまな半導体デバイスの需要を飛躍的に増加させます。その時に欠かせないのが当社の先端感光材や超高純度な溶剤であり、今後ますます当社に期待される社会的な役割も大きくなっていくため、お客様の課題解決に貢献することで、更なる事業拡大が加速することを期待しています。

木村:
もう一つは環境ですね。私は大学院で環境学を専攻していました。当時、気候変動問題は仮説でしたが、昨今の状況を見ると、実際に各国の平均気温は上昇し、台風や豪雨も頻発しています。国連のシミュレーションでも、このままいくと温暖化が加速的に進むと同時に人口爆発が起き、地球環境が人類を支えきれなくなるというシナリオがかなり現実味を帯びてきました。このような現在、目指すべきはこれまでの消費型の成長ではなく、調和型の持続的発展であり、世界全体で転換を図るべきだという潮流が大きくなっています。調和型の社会に転換するには、経済も環境も人類も、互いにハーモナイズしていく必要があり、誰かが頭一つ飛び出して貪欲に儲けましょうというのでは成り立たちません。多様なデバイスをいろいろなところにちりばめるIoTやブロックチェーンのような技術も調和のために役立ちます。EVや再生可能エネルギー、スマートグリッドも環境調和型の技術です。そして、情報化、調和型、いずれにおいても半導体デバイスは必須です。もっと処理能力を上げること、つまり高性能化が求められてきます。私たちは、二つの大きなトレンドを道しるべとして、その両方に貢献できる事業体を目指したいと思っています。

鳥井:
当社の先端感光材や超高純度溶剤などの製品は、半導体回路の微細化に貢献し、微細化はデバイスの処理速度向上などの高機能化に役立つだけでなく、大幅な消費電力の低減にも役立ちます。今後、デジタル化社会の進展とともに情報量は飛躍的に増大しますが、当社製品が高速でデータをやり取りすることに貢献するだけでなく、低消費電力化は環境負荷の低減にも貢献できますので、二つの社会的課題を同時に解決できることが期待できます。

木村:
おそらく半導体は、これからも更なる微細化、三次元化といった進化を続けていくと思います。私たちは品質と技術への強い執着によって、非常に難しい材料を高純度でつくってきたことでグローバルニッチトップという評価をいただいていますが、この道のりはまだまだ続いていくでしょう。

しかし、ここから先の領域、更なる高品質を追求していくには、大いなるチャレンジが必要になります。グローバル社会においては、今はまだ見えていないような2030 年問題がおきるかもしれないし、調和型社会へのシフトに伴って新たな社会課題が顕在化し、SDGsやESGに関してもっと次の時代に向けた具体的な取り組みが企業や社会に求められるようになっていくでしょう。それは同時に、私たちにとっても新たな機会でもあります。今後10年、東洋合成が自らの強みをしっかりと発揮して、半導体の進化とともに会社を進化させていくことで、より社会に貢献できる幅も広がっていく可能性は大いにあると考えています。

鳥井:
今後の10年を考えると、日本の労働人口も減少しているでしょうから、これからの働き手として女性活躍は重要になりますし、女性に限らず多様な人材が活躍できる組織カルチャーでなければ、会社は衰退してしまうように思います。現在の当社は、女性社員や外国人の比率は比較的少ないですが、もっと異質な人が集まって、そしてぶつかり合うことでイノベーションが加速するような、そういう社風になっていって欲しいと思っています。

木村:
私自身、新たな人材育成の考え方が必要と明確に思ったきっかけは、今の若者の生き方、新しい価値観に触れているからです。彼らは報酬だけでは動かない、どちらかというと意義とか、これからの日本社会にとって何が良いか、といったことに非常に関心が高く、パワハラ、セクハラ、機会の公平性などにとても敏感です。彼らはそういう教育を受けてきたのですから、私たちは彼らの価値観が違和感なく発揮できる会社を実現していかなければなりません。もう一つ、コロナ禍は人をより正直にさせ、組織よりも個人を尊重する変化が起きたと感じます。鳥井取締役の言われる、ダイバーシティがまさにそうです。これは個人個人の働き方の幅を許容していくことであり、個を尊重することでもあります。その多様性からイノベーションが生み出され、新たな日本の姿を体現する流れにつながると思います。しかし、何の準備もなく個人の判断に任せるだけで上手くいくかというと、そうでもありません。やはり人材育成は人の価値観や生き方を含め、地道に、継続的にやっていかないといけません。女性や若い人を含めて、いかに多様な社員が動きやすく、働きやすく、楽しくやれるかを目標に、社員とともに考え、変えていきたいと思います。

鳥井:
当社はここ数年で急速な成長を遂げ、社員数も事業規模も1.5倍程度に急拡大してきていますので、社長が言われるように、多様な人材がイキイキと働ける組織とともに、人材育成を図るための権限委譲も重要な課題だと思います。今後も需要拡大が期待され、お客様の要求が高度化するなかで、投資をすれば設備増強はできますが、スキルの高い技能者の育成はすぐには追いつきませんので、すでに取り組まれている工場の自動化をさらに加速していただきたいと思います。

木村:
今後、10年で半導体市場は少なくとも2倍になると予測されていますから、工場の自動化は急務ですし、それと並行して人材育成が最も重要だと思っています。当社は非常に難しいものを作っていますから、製造現場で判断できる人材が不可欠です。今後は半導体が活用される裾野も拡がり、しかも伸びるのは先端材料ですから、より難しいものを作っていかなければなりません。

幸いにも半導体というのは、微細化が非常に進んだ領域で、これほど細かい領域をコントロールしている材料は他にはありません。その分、品質や材料設計も非常に大変ですが、一つ素材のイノベーションが実現するといろいろなものに応用が利きます。素材のイノベーションが環境や食糧不足など、困難な社会課題を解決するキーテクノロジーになってくるのは間違いないでしょう。当社は、2030年以降の未来を見据えながら、しっかりと足元の基盤づくりに取り組んでいこうと考えています。

10年後、20年後もステークホルダーの皆様とともに、喜びを分かち合える会社であるために

鳥井:
これまで、コーポレート・ガバナンスについては二つの大きな改革を行ってきました。一つは、取締役会のメンバーを絞って、従来、報告に割いていた時間を短くし、さまざまな意思決定を行うための議論を中心にしてきました。それが現在ではすっかり定着しています。もう一点は、これから当社が挑戦していく事業計画を、当社としては初めて中期計画としてステークホルダーの皆様に情報公開しました。これにより、今までにない大規模な投資に対して、ステークホルダーの皆様のご理解とご10年後、20年後もステークホルダーの皆様とともに、喜びを分かち合える会社であるために協力をいただきながら進めていくことができました。6月からは二人目の社外取締役が入られ、取締役6名のうち2名、3分の1が社外取締役になりました。松尾取締役は生産技術とCSR にも取り組んでこられた方で、さまざまな助言が期待できますし、精力的に活動しておられる監査役との連携を深めることで、ガバナンスの強化に取り組んでまいりたいと思います。

よく言われるように「チャンスの神様には前髪しかない」、だから、チャンスが来たなら迷うことなく、経営陣が適切なリスクをとって挑戦していくことを背中から後押ししながら、中長期的な企業価値の更なる向上のために助言していきたいと思っています。

木村:
当社は、大企業とは異なったカルチャーとともに、成長を続けているため、未経験の領域は常にあります。鳥井取締役も、新しく加わっていただいた松尾取締役も、非常にたくさんのご経験をお持ちですので、30年、40年、企業の経営に携わってこられ、さまざまな発展や衰退、失敗や成功のパターンを見ておられますから、当社に今必要なことは何かを俯瞰して捉えられ、アドバイスいただけることは、本当にありがたい限りです。

そして、このたびの指名・報酬諮問委員会についても同様です。経営人材の評価や育成は常に難しい課題ですが、やはり経営陣が透明性を持っているからこそ、社員も頑張っていこうと思えるものですので、組織全体にとって非常に意義深いことだと思います。

鳥井:
これまでは当社も、「トップに一任」ということで、社長が幹部クラスを評価されてきましたが、社長の方から「目の行き届かないところがあってはいけない」という提言を受け、一年ほど前から事務局と指名・報酬諮問委員会を準備してきました。そして、この6 月に正式にスタートしました。私としては、これからの会社経営を担う幹部人材を掘り起こし、利益に貢献する人を評価することで、更なる企業価値向上に取り組んでいきたいと思っています。またダイバーシティに関しても、現在、女性の取締役は平澤取締役一名ですが、平澤取締役をロールモデルとして裾野が拡大してきていますので、さらに多様な人が活躍できるように側面的な支援をしていきたいと思います。

木村:
評価や役職に関しては、性別ではなく、実力重視で選んでいます。しかし結果として、平澤取締役の目線は、男性と女性の常識の違いに気づかせてもらえるような意見も多くあり、ダイバーシティの観点からも異なる価値観を認め、受け容れていくための良いトレーニングになっていると感じています。社員が自ら率先して、新しいことや面白いことをどんどん提案していける会社になることが、イノベーションを起こすことにつながり、当社の成長エンジンです。女性だけでなく、男性も、若手もシニアも、誰もが楽しく仕事ができ、当社の社員であることを誇れるような会社にしていきたいです。社員がイキイキと働ける会社であることが、当社のプレゼンスをより一層強いものにしていくと考えています。これからも、ステークホルダーの皆様とともに、東洋合成らしさとは何かを追求し、未来を切り拓く喜びを分かち合える会社であり続けたいと思います。

鳥井宗朝 社外取締役

1976年松下電工㈱(現パナソニック㈱)入社。2003年同社経営執行役、2010年同社専務取締役電子材料本部長。2012年ダイソー㈱(現㈱大阪ソーダ) 執行役員、2013年同社取締役上席執行役員機能材事業部長。2015年当社の社外取締役に就任(現任)。

木村有仁 代表取締役社長

2001年東京大学大学院・新領域創成科学研究科修了後、日本電気㈱入社。2003年、当社入社。2006年Thunderbird The Garvin School MBA修了。2007年当社取締役、2011年当社常務取締役感光材事業本部長。2012年当社社長に就任。