Message from CEO

時代が必要とする製品を先んじて開発
東洋合成工業は創業71年を迎えました。戦後復興の機運の中で、「これからは化学工業の時代だ」との信念をもって先代が会社を立ち上げ、日本の高度経済成長を支える中で化学メーカーとしての事業基盤を確立し、その後も成長を重ねてきました。とはいえ、この70年が常に順風満帆だったわけではありません。当社が身を置く化学業界は大手企業が群雄割拠し、グローバルな市場を舞台に激しい競争が繰り広げられてきました。そうしたなかで当社のような独立系の化学メーカーが生き残っていくためには、明確な戦略、信念が必要でした。それは、その時代、その時代に必要とされるもの、お客様が必要とするものを私たちが先回りして開発し、提供することを自らの強みとし、成長を加速させていくことでした。特にオイルショック以降、化学メーカーは従来の基礎化学品ではなく、使用目的が明確な機能性の高い製品を求められることが増えてきました。そのようななか、当社は1980年代から1990年代の初頭にかけて急速に成長してきた半導体市場に目を向け、その製造に欠かせないフォトレジスト向けの感光性材料や高純度溶剤等の需要に応えることで、"失われた30年"といわれる日本経済の低迷期にも成長を重ねることができました。
当社は経営理念に「人類の文明の成長を支えるため、人財・創造性・科学技術を核として、事業を行い、その寄与度を高めるためにも成長する」と掲げていますが、今まさにこれを実践できているのは、私たちが社会の動向に常に目を配り、時にはあえてリスクを取ってでも、時代が必要としているものを他に先んじて提供してきたからだと考えています。
日々の研究開発こそが事業の生命線
現在、当社は2022年4月~2027年3月を対象期間とする中期経営計画「Beyond500」のもと、2026年度売上高500億円、営業利益80億円という高い目標を掲げ邁進しているところです。直近の2024 年度は、生成AI 用途の先端半導体向け材料の需要増加を背景に売上が拡大し、その先を見据えた生産ライン等への先行投資も完了しました。具体的には開発分析棟、第4感光材工場を増強し、先端領域製品の生産能力を1.8倍に高めました。また、もう一つの主力製品群である高純度溶剤についても、出荷能力と製品品質を高める淡路工場第2 屋内充填所を建設し、稼働を開始しています。これにより半導体向け高純度溶剤の出荷能力は、従来比で約3倍に拡大したこととなります。2026年度にはこれら完成した設備をフル活用することで、投資効果の拡大を確認できるものと考えています。
私たちが提供する化学製品は、半導体製造に欠かせない存在であり、今やイノベーションを実現するための必須材料となっており、その進化のスピードは加速する一方です。お客さまが「こうした材料がほしい」といった時には、もはや基礎技術を開発する時間は残っていません。そのため、日々の研究開発や先を見越した生産設備の増強は、事業を継続・発展させていく上での生命線となっています。
当社は更なる供給能力拡大に向けて2027年~2029年に設備投資を計画しており、これに充てる助成金交付も決定しました。また水面下では次世代製品で必須となる要素技術の開発を進めており、今後の市場成長を支える最先端品質製品の安定供給を目指します。
地域に貢献する化学メーカーであるために
当社は地域に貢献する化学メーカーとして、そして半導体製造に不可欠な感光性材料で世界トップシェアを誇るグローバルメーカーとして、経営理念と紐づく「サステナビリティ方針」のもと、事業活動を通じてさまざまなサステナビリティ課題に取り組んでいます。
まず、国内各地に複数の化学プラントを保有するメーカーとしては、地域における環境影響の最小化と労働安全衛生の徹底は永続的に対応すべき課題であり、その結果として地域社会との信頼関係の構築が可能になるものと考えています。
当社が扱う化学物質については、制度に則って厳格に管理しており、安全投資も継続的に実施し安全性はより高まっています。また生産プロセスに伴う廃棄物の削減はもちろん、溶剤リサイクルによる再資源化にも継続的に取り組むなど、社会の要請に応えるとともに地域の方々が安心して暮らせる環境づくりに努めています。
更に地域にとっても、社員や協力会社社員にとっても、当社の各事業所が安心・安全な場であり続けるためには、安全を何より優先する意識、仕組みを企業文化として根付かせていくことが最も重要であると考えています。安全最優先の働く環境づくりに向けては、安全設備への投資から意識改革までありとあらゆる手段を講じてきました。すべての社員一人ひとりが、自らの職場が安全であると家族や地域の方々に胸を張って言えるようになるには、本当に地道で時間がかかるものと理解していますが、今後も継続的に取り組んでいきます。
地域社会との共生という観点においては、工場を含めた各事業所の安全性について地域の方々にまず納得してもらうことが非常に大切であり、そのうえで地域に親しみをもって受け入れられる企業でありたいと願っています。事業所単位で、さまざまな地域交流の機会を設けているのは、ひとえに私たちのことを地域の方々に知ってほしいからです。私たちがどのような考えのもとで事業を営み、世の中に価値を提供しているのかを地域の方々に根気よく伝えることで絆を強め、ともに発展を遂げていきたいと考えています。
更なる成長を見据え、サステナビリティ課題と向き合う
当社は直近10 年で売上が2倍以上に拡大し、これに伴い社員数も大幅に増加するなど、会社そのもののありようが大きく様変わりしました。人員増に応じて設備や規程の整備は着実に進めてきましたが、働く仲間も全国から集まり多様性が高まる中で、以前と同様のやり方では非効率な場面も増えてきたため、近年は改めて社内
コミュニケーションの活性化に向けた取り組みやチームビルディングを進めているところです。個からチームへ、組織として一丸となって課題に打ち込む体制づくりに取り組んでおり、その甲斐あって、より多くのお客様ひいては社会に貢献できる力を着実に身に付けてきていると考えています。
一方で近い将来の人手不足が確実視される中、当社にとってもこの先の人材の確保・育成・維持は重要な課題であると捉えています。これに向けては社員の処遇全般の改善はもちろんのこと、柔軟な働き方ができる社内体制を構築すべく人事制度の改革に継続的に取り組んでいます。加えて人材育成という観点からも、社員一人ひとりが生き生きとやりがいをもって主体的にキャリアを形成していけるよう、長期的な成長支援を行っていきます。
また、たゆまぬ研究開発を拠りどころとする当社特有の課題として、研究員や技術者の育成は競争力の維持・向上といった観点から欠かせません。更には今後も当社がイノベーションを生み出す土壌であり続けるために、異分野の専門的知見を融合する力の強化が課題であると捉え、こうした観点に基づく人材の採用・育成等にも尽力していきます。
オフィスや工場、研究開発施設などに設備投資を惜しまない方針については既に述べましたが、これは社員のモチベーションやエンゲージメント向上の基礎となる働きやすい環境づくりにもつながっています。社員に当社で働くことを誇りに思ってもらえることは、何よりの喜びです。すべての社員が幸せになるために何ができるのか、常にそれを念頭に置きながら、今後も社会とともに成長できる組織づくりに邁進していきます。
加えて、グローバル化の流れにあって当社も海外との取引が増える中で、カーボンニュートラルや人権への対応など、世界的なサステナビリティ推進の流れを受けた取り組みに、今後ますます注力していく必要があると考えています。中でも、2050年カーボンニュートラルへの貢献に向けては、2030年度までにScope1,2温室効果ガス排出量32%削減(2013年度比)を目標に掲げ、生産プロセスの改善や省エネ設備の導入などを中心にさまざまな施策に取り組んできました。また2024年度からはScope3の算出を開始し、サプライチェーン全体で排出されるGHGの把握・分析に努めています。Scope3の可視化に向けて具体的なアクションを起こせたことは、当社にとっても大きな前進と捉えており、今後は目標達成に向けた動きを更に加速させていきたいと考えています。
ステークホルダーの皆様へ
当社は70年をかけて技術と創造性を磨き上げる中で、化学メーカーとしての機会を捉え、これからの未来を創造するために欠かせない材料を提供するという社会的意義、創造的価値の高い事業を展開するに至りました。
現在、当社が推進する感光性材料、高純度溶剤、化学品物流の3事業は、いずれも時代の先端に必要な製品・産業を支える存在であり、今後も10年先のニーズに応えられる製品を研究開発していく姿勢を貫き、差別化された高品質な製品を確実に安定供給していくことで、市場に選ばれ続ける存在を目指します。一方で、私たちは常に世の中の声に耳を傾け、株主にとどまらず、社員、取引先、お客様、地域社会をはじめとする多様なステークホルダーとともに未来を描きながら価値を共創し、持続可能な社会の構築に少しでも貢献することが、会社としての使命であるとも考えています。環境に配慮した製品・製法、それを支える安心・安全な職場環境、そしてサプライチェーンを含めた会社としてのガバナンスのあり方など、すべてに改善を重ねながら、今後も着実に成長を続け、サステナブルな社会の実現に貢献していきます。ステークホルダーの皆様には、当社の持続的な成長と企業価値向上に向けた取り組みにご期待いただくとともに、長期的な視点でのご支援をお願いいたします。

