社長メッセージ

これからの環境調和型社会に向けて、最先端の半導体材料の技術を磨き、必須材料の安定供給を通して社会と文明の進化に貢献してまいります。 東洋合成工業株式会社代表取締役社長 木村有仁

2022年度の東洋合成工業の活動

インフレ、円安、原材料高に苦戦しつつ、売上、利益ともに過去最高を更新

経済環境

   2021年まで世界中の経済活動はコロナ感染により抑制され、感染終息後はその反動から景気拡大が予期されていました。しかしその後、ウクライナ紛争や労働力不足も加わり、世界中でインフレが加速、ナフサ・電力・原材料・鋼材価格などは2021年の2倍以上に高騰し、当社でもその影響があらゆるコストに及んでおります。また電子デバイスはコロナ感染拡大により普及が進み、その反動から2022年度に入ると緩やかに需要が下がりはじめました。

高付加価値化の推進

   当社は、前中期経営計画「TGC300」を一年前倒しで達成し、2022年度から新中期経営計画「Beyond500」をスタートしました。当社理念である、" 時代に必要なものをつくる、他社がつくれないものをつくる"を体現すべく「Beyond500」では、更なる高付加価値化を進めております。

2022年度の業績

   需要減退やインフレ、キャパシティ拡大による固定費増の影響がありましたが、2022年度通期業績は過去最高の売上高341億円、営業利益49億円と、増収増益を継続することができました。原材料価格上昇は5倍を超える製品もあり、昨年はリアルタイムの原材料価格を原価反映する仕組みを作り、対応してまいりました。

2023年度の見通し

   サプライチェーンの混乱もほぼ沈静化し、現在は、円安加速やインフレの鎮静化、半導体市場の在庫調整、世界景気の回復が課題となり、2024年以降の市場回復に向け、高付加価値化と安定供給体制の整備を推し進めております。電子デバイス市場は現在調整局面ですが、生成AIをはじめ、データ量の成長は続いており、半導体は処理能力、量ともに増加が望まれ、2030年には2020年比2倍近くに成長すると期待されています。当社では、高純度溶剤を担う化成 品を含め、先端半導体向け感光材の生産能力を2021年度比1.8倍まで増強する工事を進めており、2024年以降、徐々に投資効果が出てくると見込んでおります。

世界の変化と経営施策

世界の多極化に際し、競争力の強化、脱炭素化、BCMの強化を推進

世界の多極化

   今後、グローバル経済は、米中の新冷戦・グローバスサウスの勃興など、多極化が加速しつつ、緩やかな成長に向かうものと考えております。過去30年の新興国経済をエンジンとするグローバル化は一巡し、既にGDP・平均賃金は高まり、各国の主体的な経済政策の展開により、資源や戦略物資は各国のFTA 戦略に組み込まれ、経済のブロック化を生み、世界のサプライチェーンは複雑さを増していくと考えられます。

日本の立ち位置

   そして日本は、少子高齢化や労働力不足、税負担増などから、経済成長の前提となる、技術的優位性、人口増加、経済成長に大きな課題を抱えています。これらは今後、他の先進国でも同様に発生すると考えられ、日本はいち早くこの難局に取り組み、競争力が高いとされる機能性化学品産業では、労働生産性と付加価値を高め、グローバルでのポジションを強固にすべきと考えています。

日本の強み

   同時に、日本の化学産業も大きな転換期にあり、グリーンケミストリーやグローバルシェアの高い機能性化学品の強化に乗り出しています。しかし、競争力維持には数多くのイノベーションの実現が必要です。そもそも分子は人に見えず、シミュレーションやAIも進化しているものの、化学品の開発に想像力は必要不可欠です。中でも品質面においては、ミクロで起きていることを想像する力がとても大切で、その工業的量産を実現するとなると、背景の理解ときめ細かい配慮が大切であり、そこは日本人の強みに合致していると考えています。

脱炭素化

   そして、もう一つの課題は脱炭素化です。既にある再生可能エネルギーの適用を増やすだけではなく、日本の素材産業の強みを生かし、持続可能なサプライチェーン構築に向け、持続可能な発展に貢献できる材料やプロセス開発が重要と考えています。

安定供給に向けたパートナーシップ強化

   また、利害関係者とのパートナーシップ構築も重要です。私たちの製品は世界中で高い評価をいただいていますが、1社でできることは少なく、多極化が進む各国の利害に配慮しつつ、お客様や世界経済に貢献できるようなパートナーシップ、サプライチェーンの構築が大切です。原材料も、持続可能性に資する調達が重要であり、コロナ禍でのサプライチェーン混乱から、事業継続計画を含めた調達体制の強化、サプライチェーンの最適化、強靭化に鋭意取り組んでいます。

中期経営計画「Beyond500」の先を見据えた基盤強化

事業・環境・組織の持続的発展を目指す

当社におけるサステナビリティ

   このように世界が変化する中で、現在の中期経営計画「Beyond500」が持続可能な発展につながるように、中計ビジョン「世界No.1ダントツの超高品質と生産性向上の両立により、未来を創る」の下、化学メーカーとしての責任、素材産業としての責任、人々の未来を支える責任、の3つの観点でサステナビリティ(持続可能性)を強化しております。

安全

   まず化学メーカーとして重要な責務である「安全」については、経営方針第1項「安全操業を最優先し、従業員、協力会社社員、地域住民など関係者の 安心できる操業環境を確保する」を実現できるように、全社的に最も力を入れ、法令遵守・リスク管理・知識習得・安全設備投資・人材育成と、包括的に施策を展開しています。特に昨今では、「一人ひとりが実感できる安全の実現」が重要と考え、組織文化にも着目し、話しやすい環境、経営として準備すべきリソース、時間、場所を充実させ、現場のメンバー自らの気づきを促し、あるべき姿を考えるワークショップを全社的に展開しています。その場ではさまざまな意見が出ますが、お互いを認め合い、組み合わせていくというプロセスを通じて、初めて「本当の現場の安全」への道筋が見えてきますし、組織的成長、労災の減少や事故リスクの低減につながっていると実感しています。

環境

   次に、地球環境、社会の持続性の観点では、これからの環境調和型社会ではエネルギー利用効率を高める半導体が活躍する場面は数多くあり、処理能力の高い最先端の半導体をつくる革新的な材料をしっかりと供給し、地球と人類の持続的発展に貢献していくことが当社の大きな使命と捉えています。
   また化学工業はエネルギー消費量が大きいため、サプライチェーン全体での温暖化効果ガスの排出削減が大切です。当社では生産工程のエネルギー消費量の可視化に取り組んでおり、そこから製造工程や設備の見直しを図り、削減に努めております。また、お客様や自社の製造過程で発生する溶剤廃液のリサイクルにも取り組み、今後、さらに廃棄物の削減や大気・水質への環境負荷低減を強化してまいります。対策のスピードアップに向け、見える化したデータは、月例会議で共有する取り組みを始めております。どこまでが見え、どこが見えていないか、コントロールできていないのか、すべての課題を見える化・共有化し、三現主義で取り組んでまいります。「課題は共有できた時点で7割解決している」といわれますが、社員の環境意識も高く、共有化がより良い結果につながっていくと期待しています。その他ESG(環境・社会・ガバナンス)課題に関しても、四半期ごとのリスク管理委員会、月次の事業部会議、経営会議で課題を共有し、解決を図ってまいります。

人的資本の持続的発展、「個人が共創し、チームでイノベーションを起こす」組織を目指して

   このような改善や、中計ビジョン" 世界No.1ダントツの超高品質と生産性向上の両立により、事業を創る"を実現するのは人材であり、人材こそが創造性、競争力の源泉と捉え、人的資本の充実に向け、取り組みを強化しています。
   2022年度は" ダイバーシティ&インクルージョン"、" 中長期の成長を実現する人材育成を目的とした全社的人材育成"、
" 人材育成DXインフラの整備"、" 心理的安全性の確保"に主眼を置き、人と人の関係性に着目したチームビルディングも鋭意進めています。

品質

   中期経営計画「Beyond500」の戦略の下、全社を挙げて未来に向けた品質技術を我々は開発していますが、当社が目指す品質は未知な領域であり、技術・品質・設備・人材などの開発、DXなど部門間連携が増え、いずれも大きな進化が期待され、その実現にはイノベーションが不可欠です。

イノベーションを生むチーム作り

   イノベーションとは、異なる意見の組み合わせで生まれますが、そこで必要となるのが、互いをリスペクトし、異なる意見を許容し、そこから実現可能なアイディアを生む、強い信頼関係で結ばれたチームです。そのチームづくりには、リアルなコミュニケーションが重要であり、現在は組織感情のエンゲージメント分析、360度分析、1on1ミーティング等、チームビルディングなどさまざまな施策を組み合わせ、良きチームワークの醸成に取り組んでいます。そして、個人個人の課題や感情を大切にし、成功でも失敗でもその状況を認める、そこから次なる改善を目指す場づくりを先頭に立って示すようにしています。理想は「共創する個人がチームでイノベーションを起こす」組織です。それが社内の文化となれば、市場の変化や予測できないこと、課題や問題、技術的なハードル、すべてがみんなで乗り越えられる目標に変わります。そこに社員の誇りも生まれ、会社の競争力や付加価値が向上するとこのような道筋が、日本の労働生産性向上の実現になると考えています。

ワークライフバランス

   当社はコロナ禍に入って半年経たずにテレワークを導入し、コロナ収束後の今では、多様な働き方が定着しています。リアルなコミュニケーションの充実とともに、日々の生活で育児や介護などとの両立にゆとりが生まれ、良いバランスのなかで仕事のクオリティも向上し、結果的に残業の減少にもつながっていると思います。

メーカー、産業、未来への3つの責任を果たし、未来を創る企業へ

中計ビジョンを実現し、地域、社会、環境、人類への貢献を体現していく

東洋合成工業株式会社代表取締役社長 木村有仁    私たち東洋合成工業は、「共創する個人によってイノベーションを生み出す組織」へと変革を目指しています。それによって大きな成長を実現し、地域、 社会、環境に貢献し、未来を創っていく企業になりたいと考えています。
   当社の操業拠点は、いずれも地域の皆様のご理解の上に成り立っており、その地域に少しでも貢献できるよう、地元の方々とのお祭りやフェスティバル、落語会など、ふれあいの場を大切に、地元のスポーツ振興、奨学金助成、学術振興、雇用づくりなども積極的に推進し、共に未来を創っていきたいと考えています。私たちが注力する半導体産業の成長に疑いを持つ人はいません。どうぞ皆様の引き続きのご理解、ご支援をよろしくお願いいたします。