研究開発

研究開発


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感光材開発の高い技術力を基盤に、協働体制を強化し、未来志向の素材開発を推進

employee_2020_01.jpg執行役員 感光材研究所 所長
榎本 智至
 世界屈指の感光材開発で磨き上げた高い技術力を活用し、既存事業の枠を超えてナノテクノロジー、ライフサイエンス、エネルギー分野などのさまざまな企業や研究機関との共同開発を進めることで、市場に求められる価値ある素材の実用化に向けて開発を加速しています。化学メーカーとして持続可能社会の実現に向けて、培った開発力を活用してPFAS代替材料や省エネルギー技術の開発にも取り組んでいます。近い将来に変化や飛躍が望まれる分野で引き続き社内外の協働体制を強化し、価値共創活動を実行していきます。

市場環境

 研究開発のミッションは、「素材の力で身近な幸福へのイノベーションをつなぐ」ことです。培ってきた合成ならびに高度な精製技術を新たな分野へ展開し、事業ポートフォリオ拡大と、高度化が著しい既存の半導体材料事業分野での競争力強化を達成するため、技術を開発して実装していくことが感光材研究所の目標であり、それに向かって共創を実践していくことが活動の基本方針です。

研究開発体制

 感光材研究所は、新事業創出に向けた企画を担う研究企画部門および事業企画、製品化・品質保証・ビジネス展開までを担う事業開発部門、素材開発を実施する複数の研究開発部門からなる専門性に特化した機能別開発組織体制を構築しています。各部門は市場のニーズに応えるアイデア創出を進め、素材開発からパイロット製品までを実行できる専門性を持った人材が、総合力をもって効率的に事業開発・研究開発に取り組んでいます。また、製品の品質向上を目指し、機器分析および解析技術の開発に加えて基礎物性評価・解析を強化しており、開発・製品化部門への解析データのフィードバック体制を敷くことで改良サイクルの速度向上を進めています。

強み

・時代のニーズを価値基準に新事業分野へのアプローチや新製品
・新技術の創出に積極的に挑戦できる開発環境
・蓄積した感光性物質のラインナップと知見を活用した光機能性材料への応用力
・先端の半導体産業需要に対応する精製技術と充実した分析解析装置

研究開発人材の育成

 市場ニーズを分析し、タイムリーに開発品を提供・製品化できる組織を目指し、組織開発と人材育成に取り組んでいます。開発競争が激しくなる中、材料開発のデジタル化(DX)も進めており、マテリアルインフォマティクスを活用した製品開発・改良のため、外部機関の協力を得て教育や実践の場を設けるとともに、実際の開発現場では実績やデータを蓄積し、それを基に技術力を高めています。
 更に、基盤技術の高度化に向けては、開発プロジェクトに専門家をメンターとして招聘し、実際の開発事例を活用した協議や学習の機会を創出し、課題解決や技術向上に取り組んでいます。これにより、社内での通常のOJT(職場内訓練)だけでなく、実践的に学べるアクションラーニングを活用した効果的な人材育成を推進しています。

知的財産に関する考え方

 当社は、知的財産を将来の成長を支える重要な経営資源と位置づけ、研究開発によって得られた成果を適切に保護・管理し、長期的な企業価値の向上につなげることを目指しています。他社の知的財産権を尊重する姿勢を基本とし、製品開発の各段階で先行技術に関する調査・分析を徹底することで、権利侵害の未然防止に努めています。更に、自社の技術資産については、模倣リスクや市場環境を踏まえたうえで、特許出願による権利化とノウハウ秘匿の選択を柔軟に行い、持続的な競争力の確保と顧客への信頼維持に活用しています。これにより、知的資産を戦略的に活かした研究開発の推進を図っています。

知的財産管理体制

 当社では、知財管理部門が、研究開発部門と緊密に連携しながら知的財産に関する業務を進めています。発明の抽出、特許出願、権利の維持管理に至るまでを一貫して実施し、技術内容と事業方針を踏まえたうえで、実務経験のある担当者が適切な知財対応を行っています。また、事業所の垣根を越え、全社横断的に知的財産に関する社内相談や技術レビューを行い、開発初期段階から知財の侵害リスクや権利化の視点を取り入れています。更に、外部の弁理士や調査機関とも連携を図り、柔軟かつ実効性ある知財管理体制を整備することで、自社の技術基盤を守り、継続的な価値創出に結びつけています。

感光材研究所

新規事業創出と既存事業強化で未来の価値を創造

 積極的な社内外のアライアンス活動を通じて、ナノインプリントリソグラフィー(NIL)用の光硬化性樹脂をAR※1用途のWorking stamp(WS)樹脂展開しており、ユーザーより高い評価を得ています。感光材の応用開発としては先端のEUV※2用途で新規材料開発を進めています。これらの新規開発と既存事業の発展に向けて評価・解析技術開発体制を整備し、その成果を発信するとともに、開発力の向上を通じて社会と会社の発展に貢献していきます。

※1 AR(Augmented Reality)は、拡張現実のことで、現実世界にデジタル情報を重ねて表示し、現実を拡張する技術です。
※2 EUV(Extreme Ultra Violet)は、極端紫外線のことで、半導体の最小回路構造形成に利用される最先端の露光技術です。

2024年度主要な開発テーマ

TOPICS

市場・顧客の期待に応えるWS樹脂モールドの開発

 これから市場拡大が見込まれるARグラス(メガネ型デバイス)などの光学部品の製造にNIL技術の適用が検討されています。NIL技術では、高価で精密な「マスターモールド」と呼ばれる型をつくり、その型で複製したWS樹脂モールドを使用するのが標準となっているため、高精度に複製することが求められています。当社のWS樹脂は、UV照射プロセスのみで固まり、熱処理や型から外すための処理をせずに、マスターモールドの形状を忠実に複製することができます。更に繰り返し使用しても形状やサイズが変化しないため、安定して高品質な製品を量産でき、生産効率を高めることができます。これにより、多くのユーザーが当社のWS樹脂の採用を検討しています。

当社のWS樹脂を用いて転写した、ARグラス用の光学部品「Wave guide(導波路)」の写真