特集コラム Vol.7

Column Vol.7

安全をより確かなものにするために

   

高浜油槽所の「保護具着用推進活動」

東京湾岸の中心に位置し、危険物を保管する役割を担う高浜油槽所では、「安全操業」を継続するべく、2021年から「保護具着用推進活動」を推進しています。
協力会社のオリエントサービス株式会社と一体となり、現場の声を取り入れながら新たな手法を導き出していく同活動は、高浜油槽所に確かな安全意識を根付かせようとしています。

  • 面体付きヘルメットの採用

  • 防曇性能のある保護メガネ

  • 防毒マスクの着用徹底

  • 携帯用ポシェット

  • 静電気対応の保護手袋

現場作業者の生の声を訊き本質的な課題の解決につなげる

運営事務局担当
本社 環境安全部 担当課長
堤 清彦
ヘルメット、防毒マスク、保護手袋、保護メガネなどの保護具は作業中の事故や危険から身を守るものであり、労働安全衛生法により一定の作業環境下での使用が規定されています。安全意識を向上させていくなかで、保護具の着用率を見える化し、適切なルールの策定や運用をしていくことが必要だと感じ、保護具着用推進活動に着手しました。
今回の活動は、実際に現場作業に当たる協力会社であるオリエントサービス(株)の協力なくして成り立ちません。まずは方向性を共有することが必要だと感じ、「労災や漏洩をゼロにしたい」という当社の思いと、「従業員の安全を守りたい」というオリエントサービスの思いを擦り合わせることから始めました。そして、企画、実行、傾聴、再考と、一連のPDCAサイクルのなかで課題を分かち合い、改善に向けた方策を一緒に考えました。設定したゴールは、「保護具着用率100%」。その達成のために①意識を高める②分析・戦略③環境整備④周知・PRの4つが必要だと感じ、それぞれに担当メンバーを設置して活動を推進しました。
おかげさまで現在、保護具着用率は100%近くにまで向上していますが、一番の成果は現場が抱える本質的な課題が見えてきたことだと考えています。今回明らかになった課題をもとに、引き続きオリエントサービスと協力して事故や怪我が出ない安全な職場環境づくりを進めていきます。

From Member

大切なのは一人ひとりが"腹落ち"すること

分析・戦略/周知・PR 担当
上席執行役員
ロジスティック事業部 事業部長
吉田 勇
高浜油槽所はもともと高い安全意識が育まれている事業所ですが、安全が個々人に委ねられており、慣習として安全を維持してきた背景があります。そこをもう一段高いレベルに上げていくには、着用率を可視化し、改めてルールを設定して定着させる必要があると感じていました。ただし、最終目標はルールを決めることでも着用率100%にすることでもなく、現場の皆さんの安全が保たれ続けることです。そのためには、「保護具は自分の"盾"になってくれるものだ」ということを、しっかりと腹落ちして理解してもらうことが大切だと思います。今回の活動で現場の皆さんの声を傾聴し、さまざまな課題が明確になったことは大きな一歩だと感じています。

着用率100%から安全作業・ゼロ災につなげる

意識向上/分析・戦略担当
ロジスティック事業部
高浜油槽所 所長
鈴木 城治
現場によっては、作業効率を考えた上で保護具の着用を避けたい場合もあります。一律に「着用すべきだから着用しよう」と言うのでは、現場へ浸透していかないと考え、今回「褒める文化をつくること」を試みました。着用してくれていること、それを継続してくれていることへの感謝を、きちんと言葉にして伝えるということです。細かいことではありますが、こうしたことの積み重ねが、着用率の向上にも寄与したと感じています。
着用率を100%にまで上げるには、現場の困りごとを受けて吟味した上でルールを変えたり、保護具を変えたりする工夫が必要です。今後も継続して力を合わせ、現場に合った対策を考えていきたいと思います。

コミュニケーションの活性化こそが一番の成果

分析・戦略担当
ロジスティック事業部
高浜油槽所 参与
永野 浩
保護具着用率の数値分析や管理を担当しました。特に苦労したのは、"数値から何を読み取るか"です。それぞれの現場で着用率が上がらない理由があり、数値をどう比較してどう評価するかは悩ましいものがありました。しかし、現場への傾聴活動によって着用率が上がらない理由が明確にでき、それらを一つ一つつぶしていくことで安全意識が着実に高まっていったと感じています。
もう一つの成果は、現場から提案や意見をいただけるようになったことです。オリエントサービスとは毎月の職場安全衛生会議で意見交換をしていますが、以前よりも積極的に声を出してくれるようになりました。今後も現場との連携を保ち、さらなる安全を目指します。

いかに全員が納得する着地点を見つけるか

意識向上/環境整備担当
ロジスティック事業部
高浜油槽所 高浜品質保証課 係長
馬場 真吾
曇りにくいメガネの提案や溶剤臭気の環境改善に取り組みました。今回の活動で難しかったのが、意見の取りまとめです。作業性と安全性は天秤の関係であり、作業しづらい側面が出てきますし、人によって感じていること・求めているものはさまざまで、皆が納得するような答えを出すことは困難でした。ただ、普段は知ることができなかった困りごとに触れることができ、現場の事情に沿った提案ができたことは前進だと感じています。
「危険の反対は"無関心"」といいますが、皆が安全というものに関心を持ち続ければ危険な状態は防げると考えています。今後も、どうしたら皆が安全に意識を向けられるかを考え続けていきたいと思います。

"声をかけ合う""褒め合う"を当たり前にすること

意識向上担当
ロジスティック事業部
高浜油槽所 物流業務課 課長
加藤 永子
今回の活動は、当社とオリエントサービス、双方が'当たり前"を打破することに、意義があったのだと感じています。オリエントサービスにとっては、保護具を着けたほうが安全だとわかっているものの、現場では危険物があるのが当たり前で、危険物を取り扱っている意識が低くなっていました。私たちにとっては、保護具を着用することは当たり前なので、着用してくれていることにわざわざ褒めたり感謝を伝えたりしていませんでした。安全を保つためには、密なコミュニケーションやお互いへの感謝が重要であり、それは今回に限った話ではありません。今後もこうした意識を持ち続け、「安全を守るためには何が必要なのか」を自然と考えられる風土にしていきたいです。

活動を進めるなかで感じた、お客様の高い安全意識

周知・PR 担当
ロジスティック事業部
物流営業課 課長
鈴木 智則
周知・PR担当として、高浜油槽所にお越しになるお客様へ保護具着用を促す活動をしていました。今回の活動を通じて発見だったのが、お客様の安全意識が高くなっているということです。例えば、高浜油槽所にお越しになる際に、こちらから案内していなくても「歩きやすい靴を履いていった方がいいですか」「どのような服を着用した方がいいですか」など、当社が規則として定めていること以外の質問や提案をしてくださる方が多かったのです。また、営業という立場から油槽所に常駐している訳ではないので自分自身の安全意識も高まりました。今後、より広く油槽所のことを見ていきたいと思います。

「ルールはなぜ必要なのか」を再徹底できた有難い機会

オリエントサービス株式会社
代表取締役社長
今尾 義幸
当社は1974 年の設立以降、「高浜油槽所の指示のもと、現場業務は当社が責任を持って行う」という意識で取り組んで参りました。そのなかで安全操業を第一に心がけ、そのレベルは低いものではなかったと感じていましたが、ときに作業効率を優先するあまり、安全が見過ごされてしまうことがあったのも事実です。今回の活動を通じて、ただルールがあるというのではなく、「なぜそれが必要なのか」を一人ひとりに再認識させることができ、有難いことだと喜んでいます。当社従業員には保護具の適切な着用等により、より確実に安全を確保してもらいたいと思っており、私も今まで以上に積極的に現場(当社従業員、乗務員等の皆さん)に声掛けをしていきます。

今後も両社の目線合わせを

オリエントサービス株式会社
高浜事業所 所長
笠川 和則
今回の活動によって、東洋合成工業側で着用強化したことが波及し、オリエントサービス内でも着用しようと意識が変化してきたことが良かったと感じています。
苦労したのは、夏場の防毒マスク等の使い方です。夏場はどうしても脱着が多くなるため、どのように携帯したらよいか悩みました。コンパクトに収納でき、着用の際はすぐに取り出せるものがないか苦労しました。
少しずつですが、活動を推進していくなかで現場作業の大変さがお互いに浸透してきたと思います。重要なのは目線合わせ。今後も、現場の作業状況を見ていただき、保護具の着用条件や環境を見てもらったルール化へ改定してもらえると良いかと思います。

「ないと気持ちが悪い」と思えるくらいの浸透を

オリエントサービス株式会社
高浜事業所 所長補佐
兼 荷役グループ グループ長
羽賀 友美
荷役の現場では防毒マスクや保護手袋が必要になりますが、「まず目の前のものを対処しなくては」という頭が働きがちで、ときに着用しないまま作業が進んでしまったこともあったと感じています。まず保護具を近くに置くことで現場への意識づけになりましたし、なかった場合はどうなってしまうのか、リスクを考える良い機会になったと思います。例えば、シートベルトは、着用が義務付けられた最初は居心地の悪さを感じた方も多いかと思いますが、繰り返すことで当たり前になり、今はむしろなかったら気持ち悪いとすら感じると思います。それと同じで、保護具も着用しなければ気持ちが悪いというところまで定着させることが大切だと考えています。

「自分を守るのは自分」その意識を根付かせたい

オリエントサービス株式会社
技術業務部 部長
兼 高浜事業所 所長補佐
品川 哲夫
入社以来、高浜油槽所での設備保全に携わってきましたが、昔は作業性を優先するあまり安全性をそこまで意識していなかった傾向があったと感じています。しかし今は、お客様のニーズも扱うものも変化し、私たちも安全をレベルアップしていく必要性を感じていました。今回の活動を通じて、現場の意識をどのように変えていくかを東洋合成工業の皆さんと一緒に考えることができ、さらなる安全への足がかりになったと感じています。
現場作業者が認識するべきは、安全は自分自身で守っていくことだということです。その意識をしっかりと根付かせるべく、これからも東洋合成工業の皆さんと力を合わせて活動を進めていきたいと考えています。